元引きこもりのモノローグ

主に読書、ときどき映画。

トイアンナ『就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定』なんだこれは………。就活ってこんなに大変なのか

 さて、本日読んだ本は『就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定』です。タイトルが長いので以下では『確実内定』と記しておきます。

 私は現在、就職活動に向けて準備をしている大学生なので、おさらいもかねて、いわゆる就活本に手を出してみました。

 「就職活動は運ゲー、そして攻略法がある」と言ってのける著者は、有名大学卒かつ、学生時代から起業しているというほとんどの大学生にとって参考にならない経歴を持つ方のようです。なので、本に書いてる内容をどこまで実践できるのか(そもそもその必要があるのか?)と思うことも少しありました。

 また、インターンシップやOB・OG訪問などは、都市部でなければなかなか機会がないのでは、という疑問もあります。そもそも、懸命に働いている社会人の皆様は、大学生ごときに簡単に会ってくれるものなのでしょうか。やったことがないので、自分でもわかりません。地方の大学に通う人々は、どうやって自分を大学生から社会人に変えるのでしょう。その機会が平等ではない、という不平等があるような気もします。

 OB・OG訪問をするときの、食事をする場所の提案や、手土産、財布を出す素振りなど、こんなことまで考えなければいけないのか(というか、している人もいるんだ…。)と思ってしまいました。私も一応就活生なのですが、別世界の出来事のように感じます。

 この本の中で、一番面白かったのは「面接官は情緒不安定なラノベのヒロインである」という表現です。表面的な受け答えだけでは印象が弱いことを、「好き?」と聞かれ「好きだよ」と答えるようなものであるという例えでした。(ラノベあんまり読まないのですけど、いまどきこんなヒロインいないと思います。)本当に面接官ってそんな人たちなんですかね……。

 とはいえ、就職活動のためになる情報だけでなく、日常生活で気を付けるべきことなども書かれていて、とても役に立つ、『確実内定』でした。

 

 

感想 所正文 小長谷陽子 伊藤安海『高齢者ドライバー』 車と自由と社会発展と

 どんどん行きましょう。今回読んだのは『高齢ドライバー』です。この頃、高齢者が運転する自動車による事故についてのニュースをよく聞きますね。すると、「高齢ドライバーは危険なのかな?」と思ってしまうところですが、この本によるとそうでもないようです。

 実は日本の年間交通事故死者数は年々減少しています。(死者数だけではなく、負傷者、そもそもの発生件数なども)また、高齢者による交通事故の件数は年々増加していますが、それも「高齢者」と呼ばれる人の絶対数が増えたことに理由があります。さらに、人口比率で考えるなら、免許取りたての20代以下のほうがはるかに危険であることが明らかになっています。では、なぜメディアは高齢者ドライバーだけを問題視するのでしょうか。

 電車やバスなど発展した交通網を持つ社会で暮らす私たちですが、その恩恵を十分に受けられるのは、発達した都市部に住む人間だけでしょう。車を持つこと、そして、自分の意思で遠くに出かけること、というのは全ての人に与えられるべき自由であると思います。この本の面白いポイントは、高齢ドライバー問題を「高齢化」という人間の問題だけではなく、急速に発展してしまった社会の歪としても提起しているところです。

 今のこの車社会はたったの50年で出来上がってしまったのです。そして、1970年では、記録上最悪の交通事故率であり「第一次交通戦争」呼ばれていたそうです。「100人に一人が交通事故で負傷」というとその恐ろしさが伝わるでしょう。(平成29年度なら、交通事故の死傷者数は58万4544人、総人口が1.268億人なので、100人に0.46人ぐらいかな?それでも多いという印象)その背景には、交通や命の問題よりも、経済の発展のほうが重要であると効率性を重視した結果であると本文では記されています。

 その後、交通違反の取り締まりや罰則の強化、横断歩道やガードレール等の拡充により交通事故は少しづつ減りましたが、1980年になるとまた事故が増え始めたのです。その裏にはやはり、経済的発展がありました。

 私は、交通事故にあった被害者、そして、意図せず加害者になってしまった人々をないがしろにするわけではありません。(私自身も事故にあって負傷したことがあります)これは勝手な妄想なのですが、高齢者ドライバーが話題になるということは、この社会が経済的に行き詰っていて、命や安全の価値を重んじているのかもしれない、と思いました。 

感想 大澤昇平『AI救国論』

 今回読んだのは、大澤昇平『AI救国論』です。それでは、思い付きで感想をつらつら。

 著者の大澤昇平さんは、高専入学後、東大に編入したという経歴があり、人工知能やインターネットを研究されていたそうです。他にも、すごい実績があるようですが、私の勉強不足でよくわかりませんでした。

 「なぜ日本は衰退し続けるのか」「文系と理系のパワーバランス」「AIのこだわる理由と新しい思考方法」などいろいろ面白いテーマがあるのですが、今回は大学受験と教育をテーマに考えてみます。

  失われた30年として閉塞感を抱える日本は年功序列などの観点からたたかれることも多いです。ですが、筆者は実力のある若者がいないことが問題であり、その原因は今の教育システムにあるといいます。浅く広く学ぶクイズ形式の大学受験や、特定分野や希少価値のあるスキルを学ぶことができない大学生活など、この日本社会には回り道が多いようです。

 筆者はその対処法として、一般的な受験よりも、AO入試などの実績を判断する入学方法や、「進学校」よりも高専という選択に切り替えるべきだと述べています。(ですが、私の周りのAO入試組や高専に行った人は普通の人たちだったと思う………。)

 私も大学生なので、自分が学んでいることは何かの役に立つんだろうか、とか、社会にとって必要な人材になれるのだろうかと不安になることはあります。(私たち若者たちは無能と言われるかもしれませんが、現実的で、昔の大学生よりもまともでまじめです。)それでも、授業をボイコットしたりする勇気も、自分の人生をかけて臨みたい夢や信念も持ち合わせていない。それが、少し悔しいです。

 最後に、筆者は社会を変える若者を生み出すための方法として、文理を融合させた教育をするべきであると述べています。それは、「広くいろいろなことを学ぶこととは違うのか?」と思いましたが、プログラミングや科学技術など社会を変える「方法」だけでなく、社会学や心理学などの「目的」も学ぶべきだということでした。社会を変えるためにはまず、人の欲望というものを理解していなければならないのかもしれません。

 さて、それでは私も、読書を通じて知識と知識を結びつけ、新しい価値を生み出したいと思います。いつまでも、何の役にも立たない人間でいるのは嫌ですから………。

 

 

映画「ジョーカー」感想 ジョーカーはお前だ!

 少し時間が経ちましたが、映画ジョーカーを見てまいりました。先に見に行った知人は、「くそ映画だ!」「見ないほうがいい」と酷評しており、世間一般でも賛否両論のようです。

 なぜ、ここまで評価が割れるのでしょうか。初見の感想ですが、もしかすると、まだ現実の不条理に折り合いがついていない人はジョーカーに共感してしまうのかもしれません。

 嫌な仕事、社会から笑われること、誰にも認めてもらえないこと……。似たようなケースを持つ人々は、この世界のどこにでもいるでしょう。しかし、その人たちの多くは、現実を受け入れ、淡々と日常を生きていくしかありません。私たちは、心のどこかで、何とかして復讐がしたい、ここから抜け出したいと思っているのかも。

 心優しきジョーカーは、暴走した感情に押し出される形で殺人犯になってしまいますが、その結果、悪役、そしてヒーローとしての居場所を見つけてしまうのです。民衆に応援される形で立ち会がり、車の上で踊るシーンは、宗教的な復活を想起させます。

 しかし、ラストシーンは、夢オチのような、どこまでがスクリーンの中での現実として描かれたのかあいまいになって終わります。もしかしたら、取り調べを受けるジョーカーが語ろうとした嘘なのかもしれない。この映画は、貧困をテーマにした社会派ドラマでもなく、犯罪を肯定するものでもないのだと、印象が変わります。(もしかしたら、ジョーカーが同情を仕向けるように考えた演出?)

 それでも、この映画は私にとって嫌なものを思い出させます。忘れたい過去、受け流した感情、果たせなかった雪辱——。この映画は単なる問いかけなのかもしれません。

「お前も仮面をかぶっていないか?」と。