元引きこもりのモノローグ

主に読書、ときどき映画。

映画「ジョーカー」感想 ジョーカーはお前だ!

 少し時間が経ちましたが、映画ジョーカーを見てまいりました。先に見に行った知人は、「くそ映画だ!」「見ないほうがいい」と酷評しており、世間一般でも賛否両論のようです。

 なぜ、ここまで評価が割れるのでしょうか。初見の感想ですが、もしかすると、まだ現実の不条理に折り合いがついていない人はジョーカーに共感してしまうのかもしれません。

 嫌な仕事、社会から笑われること、誰にも認めてもらえないこと……。似たようなケースを持つ人々は、この世界のどこにでもいるでしょう。しかし、その人たちの多くは、現実を受け入れ、淡々と日常を生きていくしかありません。私たちは、心のどこかで、何とかして復讐がしたい、ここから抜け出したいと思っているのかも。

 心優しきジョーカーは、暴走した感情に押し出される形で殺人犯になってしまいますが、その結果、悪役、そしてヒーローとしての居場所を見つけてしまうのです。民衆に応援される形で立ち会がり、車の上で踊るシーンは、宗教的な復活を想起させます。

 しかし、ラストシーンは、夢オチのような、どこまでがスクリーンの中での現実として描かれたのかあいまいになって終わります。もしかしたら、取り調べを受けるジョーカーが語ろうとした嘘なのかもしれない。この映画は、貧困をテーマにした社会派ドラマでもなく、犯罪を肯定するものでもないのだと、印象が変わります。(もしかしたら、ジョーカーが同情を仕向けるように考えた演出?)

 それでも、この映画は私にとって嫌なものを思い出させます。忘れたい過去、受け流した感情、果たせなかった雪辱——。この映画は単なる問いかけなのかもしれません。

「お前も仮面をかぶっていないか?」と。